眠り姫の憂鬱。
◇私なりに◇
文化祭というのは普通に考えてみれば高校生にとって一大イベントだ。
私は人が集まってわいわいするイベントがあまり得意ではないから、去年は早く終わらないかなってそればっかり考えていたけれど、今年は楓という存在もあって少し楽しみだったりする。
朝、普通の女子高生に比べたら少なすぎる荷物を保健室に置いてから教室に向かった。
今日から文化祭の準備期間。学校の雰囲気が一気に文化祭モードだ。
「あの、おはよう」
同じ大道具係になった子におずおずと話しかけると、"おはよう、葉月さん"と返ってきた。
眠り姫とは呼ばれないんだな、と数日前まで当たり前だったはずのことを思いながら、自分が何をすべきかをその子に聞く。
面と向かって眠り姫と呼ばれたのはあれが初めてだった。
もちろん私は自分がそう呼ばれていることをずっと前から知っていたし、私がそれを知っていることをみんな知っていたと思う。