眠り姫の憂鬱。
私に指示を出すと大道具係の子たちはぞろぞろと買い出しに向かって行き、役者の子たちも外で練習するため、教室にポツンと私だけが残った。
白をスカイブルーで染めていく。
何も考えずに筆を動かせば完成に近づくそれは、思った以上に面白かった。
「…あれ?お前だけなの?」
色塗りに夢中になっているとそんな声が聞こえて、声の元を辿れば楓が立っていた。
「楓っ!!」
自分の表情が明るくなっていくのがわかる。
「他の奴らは?」
「買い出しとかいろいろ!」
「ふうん」
「楓は?私に会いに来てくれたの?」
ルンルン気分でそう聞いたのに、違えよと即答されて一気に気分は萎える。
「じゃあなんで来たのよ」
ムスッとした顔のままそう聞けば、頭を撫でられる。
最近、楓はよく私の頭を撫でる。
ご機嫌取りだとわかっていても、実際喜んでしまっているので世話がない。