眠り姫の憂鬱。


「私がやったって思わないの?」


衝撃を受けた。

てっきり吉川くんは私を責めに来たんだと思っていたから。


「思うわけないでしょ。俺らが入ってきても気付かないくらい集中してパネル塗ってる葉月が盗るなんて」


嬉しかった。

嬉しくて嬉しくて、とても感動した。

人に信用してもらうことがこんなに嬉しいものだと知らなかった。


「ありがとうっ!!」


私の頑張りを認めてもらえたような気がして、とにかく嬉しい。胸の奥がジーンと熱くなった。


「で、どうするの?問い詰める?」

「そんなことしないよ。楽しい雰囲気が台無しでしょう」


これが原因でクラスの繋がりとか団結力を壊してしまっても嫌だ。


「いいの?」

「うん。でもごめん。それ、別のクラスの子が持ってたことにしておいて」

「それは全然構わないけど」


納得いかない顔をしつつも、私のお願いを聞いてくれた吉川くんは本当にいい人だなと思った。


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