眠り姫の憂鬱。


「よ、吉川くん。どこにあったの?」


予算委員の子が引き攣った顔のまま尋ねる。

その仲間であろう女子たちは後ろでなにやらコソコソ話している。


「どこっていうか、隣のクラスの予算委員が預かっててくれたみたいだよ」

「嘘…、」


思わず漏れてしまったような声だった。

出してしまった張本人は青ざめた顔で慌てて口を押さえる。


「嘘ってなにが?俺、本当のことしか言ってないけど」

「な、なんでもないの!見つかったならよかった」


正直救いようもないことを仕出かしている彼女を、庇ってあげられるほど私はできた人間ではなかった。


「よかった、じゃなくて謝罪は?葉月に冤罪かけてたんだから謝りなよ」

「いいよ、別にそういうのは!私は気にしてないし」

「良くないでしょ」


普段優しそうな人が怒ると怖いってこういうことだと思う。

アイドルのような顔立ちの吉川くんが怒っている姿にクラスのほとんどの子が身を縮こませている。


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