眠り姫の憂鬱。
「まあ吉川の人気も凄まじいからね。もし雅が吉川のことを好きになってても三郷の時と同じように反対してたと思う」
「そりゃあ人気だよね…、」
顔はかっこいいし、優しいし、人を傷つけるようなことは絶対言わない。オブラートに包んで物事を言う。
人間として尊敬できる。
楓の方がかっこいいんだけどね!
ああ、楓のこと考えてたら会いたくなってきた。さっき会ったばっかりなのに。
「雅、また三郷のこと考えてたでしょ」
「あ、バレた?」
でも楓だって今は文化祭の準備を頑張っているだろうし、邪魔できない。
今回ばかりは我慢しよう。
「口がニヤけてたよ」
「へへっ」
楓のことを考えたら元気が出てくるの、なんでなんだろう。
私はうーんと背筋を伸ばした。
「よし、もうひと頑張りするか!」
文化祭は近い。
パネルも早く完成させなければ。
各自の持ち場にわらわらと散っていくクラスメイトたちの中、私は再度筆を握って今度は濃紺の空の色を塗り始めた。