眠り姫の憂鬱。
長く見すぎてしまったのか吉川くんが不思議そうに私を見てきた。
私は誤魔化すようにへらりと笑う。
と、その時、ドンッという鈍い音と共にテーブルに勢いよく水が置かれた。
「お客様、あちらに席をご用意できましたのでそちらに移って頂けますか?」
「か、楓?!」
「いえ、俺はここで大丈夫ですよ。葉月さえ良ければ」
「こんな騒がしい奴の前では落ち着いて飲食できないでしょう」
「え、悪口?!」
楓は私を睨みながら一瞥する。
え、私なにかしたっけ?
ただ悪口言われただけだよね?
と、その時、吉川くんの名前が呼ばれた。
声の元を辿れば同じクラスの吉川くんと仲の良い男の子が数人いて、吉川くんに向けて手招きしている。
「お邪魔のようだし呼ばれてるからあっち行くね。また後で」
「うん!」
吉川くんがいなくなって楓の方を見ると楓はやっぱり不機嫌オーラ全開だった。