眠り姫の憂鬱。


保健室の扉には、『先生 外出中』の札がかかっていた。


「先生、呼んでこようか?」

「ううん、寝てるだけで治るからいいよ」


保健室のスペアキーの在り処はわかる。

外出中の札の裏にポケットがついていてそこに鍵があるのはほぼ毎日保健室に通う私だけが知っている。生徒の中で知っているのは多分私だけ。


得意げにスペアキーを楓に見せれば、楓は目を丸くしたあと微笑を浮かべた。


保健室に入るとベッドに潜り込んだ。

体調が悪いと認めれば怠くなる体。少し熱っぽいかもしれない。


「何か飲み物いるか?買ってくるけど」

「ありがと。じゃあお水がほしいな」

「わかった」


楓が保健室から出ていくのを確認し、ベッド周りのカーテンを閉めるとポケットから薬を取り出した。

PTPシートから薬を押し出して口へ運ぶ。

水なしでごっくんと飲み込むと喉でつっかえている感じがした。


空になったPTPシートはゴミ箱に捨て、再びベッドに潜り込む。

その数秒後楓が帰ってきて、危なかったなとバレないように溜め息を吐いた。



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