眠り姫の憂鬱。


楓が買ってきてくれた水はとても冷たくて美味しかった。


「楓、もう少しここにいて」

「ん」


布団から手を出し、楓へと伸ばす。

すると、楓はその手を握ってくれて、これ以上の幸せはないと思った。


「私ね、眠り姫って呼ばれるの別に嫌じゃないんだ」

「……、」

「だって事実寝てることが多いし…、それにかわいいし!」

「お前らしいな」


楓がフッと笑みを零す。

私はぎゅっと繋いだ手に力を込めて、楓はずっとずっとこのままでいて欲しいと願った。自分の意思があって真っ直ぐでちょっと心配性な楓のまま変わらないで、と。


そして私は瞳を閉じてそのまま眠りについた。


次に目を覚ました時、隣に楓の姿はなかった。

時計を見れば4時を指していて、保健室に来てからもう2時間半ほどすぎているから、いなくても当たり前だよな、と思う。


文化祭が終わるとSHR(ショートホームルーム)があるのがうちの学校の決まりで、それには参加しないといけない。


寝すぎたのか、少しクラクラするがなんとか重い体を起こした。


どうやらここに結城先生はいないらしい。

仕方がないのでまたスペアキーを使って保健室を戸締りし、教室に向かった。


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