眠り姫の憂鬱。
第4章
◇近づく◇
「葉月じゃん。誰か探してんの?」
と、教室をのぞき込む私に声をかけてきたのは吉川くんだった。
購買から帰ってきたところなのか、右手には白いビニール袋を持っている。
「真依いるかなーって!一緒にお昼食べるから!」
「ああ、そこにいるよ。呼んでやろっか?」
そう言って教室に入ろうとする吉川くんの腕を掴んで慌てて止めた。
「ううん、いいよ!待ってるから」
「ふーん。てか教室入ればいいのに。自分のクラスだろ」
自分のクラスと言っても入りずらい。
このクラスには私がいないのが常なのだから。
そう言えるはずもなく笑って誤魔化す。
吉川くんは察しがいいから何かを感じたんだろう、話題を変えてくれた。
「そういえば俺、今日誕生日なんだよね」
「ええ!すごい!お祝いしなきゃ!」
今私にできることは誕生日の歌を歌うことくらいしかできないけど。