眠り姫の憂鬱。



「違うよ、葉月。モノをもらおうなんて思ってないから」

「え?じゃあなんなの?誕生日プレゼントって」

「うん、葉月にはこれから駆琉(かける)って呼んで欲しいなって」

「…駆琉…くん?そんなことでいいの?」


申し訳ないことに知らなかったけど、きっと駆琉というのは吉川くんの下の名前だろう。

下の名前を呼ぶなんてお安い御用だ。

むしろ呼ばせてくれてありがとう。仲良くなれた証明のような気がして嬉しい。


「"そんなこと"じゃねえよ。大きいことだよ。呼んでくれる?」

「当たり前だよ!」

「ありがとう。それと俺も雅って呼んでいい?」

「いいよ!」


勝手に呼んでくれてもいいのに、吉川くん改め駆琉くんは律儀な男だ。


「やった」


笑う駆琉くんにそんなに喜ぶほどのことでもないのに、と思いながら笑い返した。


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