眠り姫の憂鬱。


放課後。

私が下駄箱へ向かうと既に楓がいた。


「お待たせ!」

「別に待ってねーよ」


私が上履きをローファーに履き替えたのを確認すると楓は先を歩き出した。私は慌ててその背を追う。

楓の背を見つめながらさっきのことをもう一度考えてみる。


私の存在は楓にとってどんなものなんだろう。

私にとって楓は唯一無二の存在だ。きっと初めて見た時に感じた運命は正解だったんじゃないかと思う。

だけど楓は違うかもしれない。楓にとっての運命の人は他にいるのかもしれない。

だったら私は…──


不意に楓が立ち止まり、随分と考え込んでいたらしい私は楓の背中に激突した。

見ると信号が赤だった。


「おい、ちゃんと前見ろよな」


楓は呆れ気味にそう言う。


「へへっ、ごめんね」

「てか、なんで後ろ歩いてんの」

「え、横を歩いていいの?」

「逆に後ろからついてくる方が変でしょ」

「確かに…、」


この前家に行った時も後ろをついて行ったから、当たり前のようにそうしていた。


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