眠り姫の憂鬱。


信号が青になり、楓の隣を歩く。


「何をそんなにボーッとしてたの?」

「…ちょっと、考え事してて」


ふーん、と言うだけで、深く尋ねてこないことが有難いと思った。


「…そういえば、あれから吉川と仲良いの?」

「駆琉くん?うーん、文化祭のことで業務連絡するくらいだよ?」


どうしてそんなことを聞くんだろう?

楓が尋ねてくることはたまに意図が読めない。

思っていたことが顔に出ていたのか、ごめんと謝られた。

謝ってほしいわけじゃなかったけど、いいよと言って笑いかける。

その瞬間、何故かわからないけど不安な気持ちに駆られた。まるで、楓との距離が一気に遠ざかるようなそんな予感を覚える。


それから楓の家に着くまでふたりとも黙っていた。それがさらに私の不安を掻き立てた。


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