眠り姫の憂鬱。


楓の家は前来た時と変わらず温かい雰囲気のお家で、変わったところといえばガーデニングの花がラベンダーからリンドウになっていることくらいだ。


「おじゃまします〜」


自分の履いていたローファーを玄関の隅に並べて家に上がった。

どうやら今日も楓のご両親はいないらしい。


「お兄ちゃんおかえり〜って、げっ」


出迎えてくれたのは七海ちゃんだ。


「七海ちゃん久しぶり〜!私も会いたかったよ!」

「は?私持って何?私もって」

「七海会いたいって言ってたじゃん」

「い、言ってないし!」


顔を真っ赤にして否定する七海ちゃんがとにかく可愛くて私は力いっぱいハグをした。


「なっ、何すんの!」


元気そうだし、顔色も良くて何よりだ。

ハグを解いて笑いかけると睨まれた。

相変わらず私にはツンの部分しか見せてもらえない。


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