眠り姫の憂鬱。


「今から俺、夜ご飯作らないといけないから何にもしてあげられないけど、そこら辺で適当に座ってて」


そう言って楓はエプロンをつける。


「え、楓が作るの?夜ご飯?」

「今日は母さんの帰りが遅いから」


興奮気味に身を乗り出すと、呆れ顔で食べてく?と聞かれたので、私は大きく首を縦に振った。


「私も手伝ってもいい?」

「料理できんの?」

「お菓子しか作ったことない!」

「あ〜、そんな感じするわ」


ん?どういう意味かな?

料理が出来ないのは事実なのだけど、今のはちょっと聞き捨てならないな。


楓のお母さんのエプロンをお借りしてキッチンに立つ。


「野菜切ってもらうけど、準備するからちょっと待ってて」

「はあい」


その時、なんとなく、本当になんとなく、リビングの方が静かだなと思ってキッチンから覗くと、七海ちゃんが横たわっているのが見えた。


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