眠り姫の憂鬱。


翌日、学校にて楓に会うと七海ちゃんが回復に向かっていることを教えてくれた。


「なあ、そういえばお前昨日、病院で医者と話してなかったか?」

「えっ」

「知り合いなのか?」

「…実は私、病気で、」

「は?それは前に嘘だって…、」

「…あ、あれ?そのネタもう使ってたっけ?」


また、言えなかった。

そんな顔をされたら言えないよ。そんな哀しげな目をされたら、言えないよ。


「お前な!やめろよそういうの!」


確かにそうだよね。七海ちゃんことがあった直後にこんな冗談言うなんて、不謹慎にも程がある。

だけど本当のことを言うのが怖くなっちゃって。


「ごめんなさい。本当はね、顔色が少し悪かったみたいで心配して話しかけられただけなの」

「はあ?そういうのはもっと早く言えよ。大丈夫なのか?」

「うん、全然平気!ごめんね」

「いいよ、別に」


こんなくだらない嘘をついた私を心配してくれるなんてこの人はどれだけ優しいんだろう。

嘘を塗り重ねてしまった罪悪感と切迫感に気分はなかなか晴れなかった。


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