眠り姫の憂鬱。


ふれあいコーナーの次はお目当てのウミガメを見た。

初めて見たウミガメは思ったより大きくて、赤ちゃんはとても可愛かった。


「すっごい!でっかい!」


語彙力が皆無なので、私の感想はそれしか出てこない。


「ほんとだ。すげえ」


耳元で聞こえたので反射的に横を見る。

近っ!!!!

楓は私の後ろから覗き込むようにしてウミガメを見ていた。

ウミガメに夢中な楓はたぶん無意識でこの距離感になったのだと思うけど、あまりの近さに私の頬は火照った。

もはやウミガメどころではない。


見てるはずのものが脳内に入ってくることはなく、あとから思い出そうとしてもただドクンドクンと音を立てる心臓の激しさだけを覚えている。


ウミガメを見たあとは、ちょうどお昼の時間だったのでご飯を食べることにした。


お昼時なだけあって水族館内のレストランの席はほぼ満席。

なんとか空いている席を見つけ、私が場所取りをして楓が買ってきてくれることになった。


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