眠り姫の憂鬱。
ふう。
夢中になってずっと立ちっぱなしだったから椅子に座れて足が喜んでいる。
テーブルに肘を置いて頬ずえをついた。
楓とデートしている今日が幸せすぎて夢のようだ。
きっと私はこの日のことを死ぬまで忘れることはないだろう。
感慨にふけていると、一人の男性に声をかけられた。
「君、ひとり?」
「いえ、違いますけど」
「そりゃそうだよね。こんなところひとりで来ないもんね」
男性は納得した様子で何度も頷くが、この場を離れる様子はない。
「彼氏と来てるの?」
「…彼氏ではないです」
私は馬鹿正直に答えた。
目の前に立つ男性は驚いた顔をする。
「彼氏じゃないんだ。なら良かった。これから俺と廻らない?一応デートで来たんだけどつまらなくてさぁ」
「はあ…」
「君の方が何倍もかわいいし…、ね、いいでしょ」
何がいいんだか全くわからないが、相当自信があるのかかなりグイグイと踏み込まれて圧倒される。
それをいいことに腕を握られたからさすがの私も体が強ばった。