眠り姫の憂鬱。
水族館を出て、ゆっくりと駅への道を歩きながら思う。
今日、楓とデートできて本当に幸せで、本当に良かったって。
でも同時に思う。
今日、デートしてしまって良かったのかって。
「ねえ、楓。私がこの世界からいなくなったらどうする?」
なんて、楓はどうってことないよね。だってそうじゃなかったら嬉しいけどそれ以上に困る。
「…は?」
そんなに深く捉えられると思ってなかったのに、楓はその場に立ち止まり目を見張る。
思ってもみない反応にちょっぴり焦った。
「…例え話だってば!じゃあ、世界に私と楓のふたりだけになったらどうする?」
「そりゃ大変そうだな」
「えー、それどういう意味?」
「そのまんま」
楓とのデートは家に帰るまでずっと楽しかった。
デートしている間は普通の女子高生になれたような気がした。