眠り姫の憂鬱。
先生に口を酸っぱくして走っちゃダメと言われたこともあって、ゆっくり歩いていたら学校に着いたのはギリギリだった。
ふう、と一息ついて校門を潜った。
今日は保健室に寄る時間もなくて教室に直行する。
教室に入ると教室中の視線を集めた。
いくら普段から教室に来ない私だって、数週間学校に来なければ気づかれるし不審に思われるはずだ。
真依の方を見ると目が合って、その表情から私をとても心配しているというのが伝わってきた。
言葉は交わせなかったから笑顔で手を振って、自分の席につく。
事情を知っているはずの先生は気を使ってくれたのかそうじゃないのか、いつもと変わらず朝のHR(ホームルーム)を進めていく。
日常に帰ってきた気がしてとても嬉しかった。
それが錯覚にすぎないと知っていても。
私は今日を大切に過ごそうと決めていた。
学校に来れるのもこれが最後かもしれないから。