眠り姫の憂鬱。


時刻は午後2時を過ぎたところ。

今頃学校はまだ授業中だろう。

あの日、真依には最後まで病気のことを伝えるか迷ったけれど、結局言えないまま帰ってきてしまった。

今は風邪をこじらせたことになっている。

かなり無理な話だし、もしかしたら薄々勘付いているかもしれない。

ちゃんと伝えた方が真依を悩ませずに済んだような気がするので少し後悔している。

でもあの時は、打ち明けるのがどうしても怖くて無理だった。


真依は今何の授業を受けているのかな。

楓は……、

元気にしてるかな。


我に返り、自分の病室から遠ざかっていることに気付く。

どうやら考え込んでいて通り過ぎていたらしい。


来た道を戻ろうと踵を返したその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「お兄ちゃん、こっち!」

「わかった」


あれは、楓と七海ちゃんだ。

…そうか、七海ちゃんもこの病院に通っているから…!

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