眠り姫の憂鬱。


思いもしない一言が楓から放たれて私は固まってしまった。


「…知ってたの?」


どうして?七海ちゃん?

いや、七海ちゃんは私が手術を受けることを知らない。

先生は守秘義務があるから話すはずがない。

なぜ知ってるの?

いつから?

最後のデートをした時は知ってた?

同情したから我儘に付き合ってくれたの?

どこまで知ってるの?

ああ、頭の中がグチャグチャだ。


「ごめん。…七海がら倒れて病院に言った日に、母さんに雅の名前を言ったら知ってる子だって…、」

「…楓のお母さん?」

「三郷 奈都(なつ)って人を覚えてない?」

「っ、なつ、さん…、」


なつさんは私が小さい頃入院していた時によくお話をしてくれた女の人だった。

なつさんの息子が楓?嘘だ。そんなことってあり?


「母さんから話を聞いて、こんなに長く入院しているってことは手術するんじゃないかって」


楓は全て知っていた。

知っていた上で来ていたの?

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