眠り姫の憂鬱。
「こちらこそごめんね。私の我儘に付き合わせちゃって」
「雅?」
「本当にもういいよ、会いに来なくて」
「は?」
「出てってッ!!!」
これ以上知られたくない。
惨めな姿を見せられない。
「雅!」
腕を強く掴まれて、ゆっくりと視線を楓に移す。
楓は眉間に皺を寄せ、不機嫌そうにも見える。
振り回されて怒っているのかもしれない。
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになって顔を伏せた。
しかし楓は一息吐いて、それから柔らかい声で話し始める。
「俺、ずっと待ってた。雅が自分から病気のことを話してくれるのを」
「え?」
「頼って欲しかった。俺は雅にとって少しは必要な存在なんだと思っていたから。でも、別れを告げられて、それは自惚れだったとわかったんだけど」
「ちがっ!」
弾かれるように顔を上げれば、視線が絡み合う。