眠り姫の憂鬱。
「雅はもう、俺のこと好きじゃない?」
違うよ。そんなわけない。
「…、き」
「え?」
「ずっと、楓だけが好きッ」
ずっとずっと我慢していて、ずっとずっと流すことのなかった涙がポロポロと溢れて頬を伝う。
拭っても拭ってもとめどなく流れるそれは布団を濡らした。
そして涙を拭う手は楓に捕まって指を絡められる。
「お前は本当に嘘つきだな」
そう言ってふわりと微笑まれたから、私は嘘つきでよかったと思えた。