眠り姫の憂鬱。

◇眠り姫と王子様◇



ある晴れた冬の日。

私は手術室へと向かった。

隣にいるのはお父さん、お母さん、そして楓。


「いってくるね」

「待ってる」


本当は楓に見送ってもらうはずじゃなかったのだけれど、楓の方から傍にいてくれると言ってくれた。

数時間後、私がここに戻ってこれるのかわからない。

私は楓に抱きついた。

楓は驚きながらも私を受け止めて、抱きしめ返してくれる。

大丈夫。

先生がきっと成功させてくれる。

ゆっくりと抱擁を解いて、アイコンタクトした。


「雅…、」


震えた声で私を呼ぶのはお母さん。

今にも零れそうな涙を目に浮べるお母さんとその肩を支えるお父さんに笑いかけた。


「お父さん、お母さん、今までありがとう。必ず戻ってくるから」


お母さんはただただ頷いて涙を堪えている。

私は両親とも抱擁を交わした。


久しぶりの手術、緊張しちゃうな…。

家族に、友達に、楓に、大切な人に再び会えるように。

願いを込めて目を閉じる。


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