眠り姫の憂鬱。
───誰かに呼ばれている。
眩しい。
瞼を閉じていても光を感じる。
少しずつ目を開けても、眩しすぎてすぐに閉じてしまった。
もう一度慎重に瞼を上げる。
「雅」
私を呼んだ声の主の方を見れば、私の手を握り表情を緩めた楓の姿があった。
その瞳は暖かい光を宿している。
「おはよう、眠り姫」
「ただいま」
そして起き上がれない私を、ベッドに寝たままの私を抱きしめた。
私もそっと楓の背中に手を回す。
途端に涙が込み上げてきて、また泣いてしまった。
「泣き虫だな」
楓が笑いながら言う。
君のせいだよ。
君がいるとどうしようもなく安心するから。
濡れた頬を撫でる楓の手は震えていた。
体温を感じる。
ドクンドクンと一定のリズムを刻む心臓の音が聞こえる。
私は、生きているんだ。