眠り姫の憂鬱。


それから数週間を経て私は退院した。

もう病気だったことが嘘だと思えるほどに元気だ。


季節は巡り桜の花が舞う季節となる。

もうすぐ楓と出会って一年が経とうとしていた。


「いってきます!」


校長先生を始めとする先生方の配慮のおかげで無事進級できた私は今年度から高校三年生となった。

学校に行くには早すぎる時間に家を出た私がどこに向かうのは楓の家だ。


ピンポーンとチャイムを鳴らせば、数秒後には楓が出てくる。


「おはよう、楓!」


寝起きだからかテンション低めの楓は小さくおはよ、と返してくれる。

それだけで嬉しすぎて、ニマニマしてしまう。


「俺が迎えに行くって言ってんのに…、」

「ヤダ!私が来たいんだもん」

「あんまり無理すんなよ」


楓の心配性を再確認したところで学校へ向かおうとすると、玄関の扉がガチャリと開いて女の人が顔を覗かせる。

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