眠り姫の憂鬱。
「小さい頃に私と雅ちゃんで写真撮ったでしょう?その写真を写真立てに入れて飾っていたんだけどね、それを見た楓がこの女の子に会いたいってずっと言ってたのよ」
「はぁ、母さん…、」
秘密をバラされて奈都さんをジト目で見る楓。その耳は赤くなっていた。
「へぇ〜、そうだったんだぁ〜」
頬を緩ませながら言うと、再び溜め息を吐いて先に歩き始めてしまった。
奈都さんに教えてくれてありがとうございますとお礼を言い、慌ててその背中を追いかける。
「じゃあじゃあ!楓の初恋ってもしかして私?」
楓の顔を覗き込みながら聞いてみると鬱陶しそうにしながらも答えてくれる。
「そうかもな。だけどその子が同じ学校の、それも俺の周りをうろちょろしてるお前だとは思ってなかった」
ふと、初めの頃、私が暇さえあれば楓に話しかけていた時のことを思い出した。
あの頃の楓はとにかく素っ気なくて、クールって呼ばれてるのも頷けると思っていたけど、今考えれば照れ屋だから人見知りのようなものがあったんだって思う。