眠り姫の憂鬱。
◇近づきたい◇
あれから私と三郷くんの心の距離は、うんと近づいたと思う。
なぜなら音楽室に毎日のように通えば、三郷くんが待っていてくれるし、それにおはようって挨拶したら、
「…はよ」
ちゃんと返してくれるようになったから!
えへへ、と笑えば、三郷くんは私の頬をぐいっと押して無理矢理顔を背けようとする。
そんなところも可愛くて、いちいち胸がきゅんとする。
放課後の音楽室へ向う途中、いつものように廊下に漏れたピアノの音ににんまりする。
なんていうか。繊細なんだよな、三郷くんのピアノは。
実は私も小さい頃から中学校に入ったぐらいまでピアノを習っていたのだけど、そんなふうには弾けなかった。
だから私のボキャブラリーじゃ表現出来ないけど、三郷くんの才能はすごいんだと思う。