眠り姫の憂鬱。
「どどどどどうしたの?どっか痛いの?」
私も慌ててしゃがみこんで、三郷くんの顔を覗き込む。
すると、三郷くんは顔を隠していた手をどけて私の顔をじっと見てくる。
だから私も動けなくなって自然と見つめ合う形になった。
「葉月 雅、っていうのか」
「うん!三郷くんと同じ、下の名前みたいな名字だよね!」
三郷くんに名前を呼んでもらえたことが嬉しくて、胸がきゅんって鳴って、私は笑みを零した。
「はぁ…、何やってんだ俺」
「え?なんて言った?」
「なんでもねーよ」
三郷くんってば小さい声で喋るから何言ったのか検討もつかないよ。
まあ、いっか。
「あ!三郷くんはミヤって呼んでいいよ!」
「呼ばねえよ!」
「私は楓って呼ぶからさ!」
「呼ばなくていい!」
そんな全力で拒否らなくてもいいのに。
ちょっと傷付くよ。
でも、三郷くんが照れ屋さんって知ってるからかろうじてダメージ軽減される。