眠り姫の憂鬱。


保健室から出てきた子たちは、隠れている私に気づくことなく通り過ぎていく。


「マジでズルいよね~」

「先生もなんで注意とかしないんだろ?眠り姫だけ特別待遇されてない?」

「それなっ!絶対金払ってるよね~」

「確かに!」


女の子たちが見えなくなったのを確認して、私は再び保健室に向かう。


「お金なんて払ってないのになぁ」


とか、直接あの子たちに言えやしないのに。


噂はみんなが好き勝手自分たちの面白いように変えて、また拡散されていく。

今度は、私がどっかの金持ちの家のお嬢様で、学校に莫大な寄付金を払っている、とか噂されてたりして。


「おっかしー!」


私はクツクツと笑って、それから深呼吸すると一気に保健室の扉を開いた。


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