眠り姫の憂鬱。
昼休み。
お弁当を真依と一緒に食べようと、教室に向かおうとした時だった。
少し乱暴に保健室の扉が開いたかと思えば、心做しか息が上がっているような楓がそこに立っていた。
彼の瞳が私を捉えると、僅かに目を大きくした。
「え、かえで…?」
楓が私を訪ねてここに来るのは、楓の家に行ったあの日以来なかったから、突然の訪問に驚きを隠せない。
「どうしたの?」
なんでそんなに急いでるの?
って聞きたいけど、楓からただならぬオーラを感じて、うまく言葉が出てこなかった。
「なんだよ。元気じゃん」
息を吐くように呟かれたそれは、安堵が含まれているように聞こえた。
「元気だよ」
へへっ、と笑ってみせると、真顔のままの楓が私に問う。
「お前、なんで昨日休んだんだよ」