眠り姫の憂鬱。


昼休み。

お弁当を真依と一緒に食べようと、教室に向かおうとした時だった。

少し乱暴に保健室の扉が開いたかと思えば、心做しか息が上がっているような楓がそこに立っていた。


彼の瞳が私を捉えると、僅かに目を大きくした。


「え、かえで…?」


楓が私を訪ねてここに来るのは、楓の家に行ったあの日以来なかったから、突然の訪問に驚きを隠せない。


「どうしたの?」


なんでそんなに急いでるの?

って聞きたいけど、楓からただならぬオーラを感じて、うまく言葉が出てこなかった。


「なんだよ。元気じゃん」


息を吐くように呟かれたそれは、安堵が含まれているように聞こえた。


「元気だよ」


へへっ、と笑ってみせると、真顔のままの楓が私に問う。


「お前、なんで昨日休んだんだよ」


< 86 / 236 >

この作品をシェア

pagetop