眠り姫の憂鬱。
その空間が孤独をより一層強調しているようだった。
そもそも謝ったら、許してもらえるかな。
またお話したりできるようになるのかな。
チャイムが授業終了を告げたら、私は足早に音楽室に向かった。
あの楓がピアノを弾いていた音楽室だ。
だけど5分ほど待ったところで、楓は来ないんじゃないかという不安がよぎった。
あとから考えればたった5分しか待っていなかったのだけど、それでもその時の私はとても長い時間に思えた。
「教室行ってみよう…」
普段階段を駆け降りたりしないから転げ落ちそうになりながらも下り、楓の教室に向かう。
そして楓の教室を覗き込めば、リュックに教科書を詰める姿が見えた。
チャイムがなってから10分ほどしか経っていないのに教室にはもうほとんどの人が居らず、もはや私の目には楓しか映らなかった。