眠り姫の憂鬱。


「ごめんなさいっ!!」

そう言って後ろから楓に抱き着く。

怖くて顔を見たくなかったからだ。


「おわっ!」


キツく腕を巻き付ければ、楓の体温が僅かに伝わってくる。

その温かさが私にほんの少しの安堵を与えた。


「へっ、はっ?俺、怒ってねえよ?」

「でも、朝いなくなっちゃうし…、」

「それは…、悪い。あのままいたらもっとお前を責めてしまいそうだったから」

「どういう、こと?」


楓の背中をじっと見つめる。

顔は見えないけれど、楓が息を呑むのがわかった。


「昨日お前が休んだ理由わからなかったから気になっててさ、その反動っていうかなんていうか…、ごめん」

「え?」


たった一日休んだだけだよ?

それなのになんでそんな心配してるの?

やっぱり楓は心配性みたい。



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