眠り姫の憂鬱。
「心配かけてごめんなさい!」
「べ、別に心配はしてねえよ!!気になっただけだよ!」
「…ごめんなさい」
楓の手によって私の腕は解かれ、彼の真剣な眼差しと交わる。
私はきゅっと口を噤んだ。
「お前がふらっと消えそうで怖かった。こっちこそ当たってごめん」
「え、ええ。何言ってるの、消えないよ」
少し、ギクリとしたのは秘密にしておこう。
いつものように笑ってみせようとしたけど、頬が引き攣る。
それはそれはヘタクソでこんなんじゃ作り笑顔ってことがバレちゃうよ、ってくらい。
ふたり、じっと見つめ合うと何もかも見透かされそう。
楓の瞳はグレーにも見えるような、透き通った黒で、綺麗すぎるそこに私が映っているのか懸念を抱くこともしばしば。