眠り姫の憂鬱。


すると目に飛び込んできたのは『真依』ではなく、『楓』の文字で。


『お前、今どこにいる?』


まさか楓がこんなことを聞いてくるなんて思ってもみなくて驚きつつも返事を打つ。


『駅前だよ!』


「ねえねえ、俺らは放ったらかし?」

「いえ、その、」


この人たちが楓だったら喜んでついて行くのに、って考えている私はもう末期だ。


それにしても本格的にこの人たちをどうにかしなきゃいけない。

でもどうやって?


頭を捻っていると再びスマホがメッセージの受信を知らせる。


『じゃあやっぱりそれ、お前か』

「え?」


頭の中いっぱいにハテナマークが浮かんだところで再びトーク画面が動く。


『お前、なんか絡まれてね?』

「え!」


なんでわかったの?!もしかして楓って千里眼でも持ってるのかな?


『ちょっとピンチかも』


ちょっとだけ本音を漏らしてしまったのだけど既読が付いても返信が無いから、やってしまったと思った。

余計なこと言うんじゃなかったと後悔していたら、不意に後ろから肩に腕を回された。



「これ、俺の連れなんだけど」


…楓ってテレポーション、習得済みだっけ?


いつもより近く感じる息遣いに心臓は鼓動を早める。


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