スノーフレークス
「雪女の伝説では、その存在を他言した者は雪女に殺されていたわ。もし私が同じことをしたらあなたも私にそうするの? あなたが私に近づいたのは昨夜のことを口止めするためでしょう?」
氷室さんの瞳の色が変わった。今さっきまでグレーとブラウンとグリーンがまじり合っていたのに、少し翳が差してきた。
「日向さん」
彼女は静かな声で言う。
「さっきも言ったように私たちはむやみな殺生はしたくないの。確かにあなたには私たちの正体を他の人にばらしてほしくはないわ。でも、あなたを殺すことなんかどうしてできるの? あなたは私の恩人なのよ」
彼女は悲しそうな目をして私を見る。ちょっと行き過ぎた質問をしてしまったかもしれないと私は反省した。
「氷室さん。私はあなたたちのことを話すつもりはないわ。あなただって私の命の恩人だから、あなたを困らせるようなことは絶対にしないわ」
私は彼女を安心させようとした。まあ、雪女が実在するなんていう突飛なことを話したって誰にも信じてもらえないだろうけど。
「それを聞いてほっとしたわ。私たち雪の眷属はひっそりと暮らしたいの」
氷室さんの瞳の中に再び光が戻った。
澁澤君も氷室さんの正体に気づいている。でも、彼は実際に白い女たちの不思議な行動を見ていないから、今のところ問題視はされないだろう。たとえ雪の眷属とやらに目を付けられたとしても彼には御仏の加護がある。
公園の内堀にかかる、赤い欄干が鮮やかな朝陽橋の所で私たちは別れた。私は本日ポイント五倍デーを開催しているフレッシュ市場に向かった。
氷室さんの瞳の色が変わった。今さっきまでグレーとブラウンとグリーンがまじり合っていたのに、少し翳が差してきた。
「日向さん」
彼女は静かな声で言う。
「さっきも言ったように私たちはむやみな殺生はしたくないの。確かにあなたには私たちの正体を他の人にばらしてほしくはないわ。でも、あなたを殺すことなんかどうしてできるの? あなたは私の恩人なのよ」
彼女は悲しそうな目をして私を見る。ちょっと行き過ぎた質問をしてしまったかもしれないと私は反省した。
「氷室さん。私はあなたたちのことを話すつもりはないわ。あなただって私の命の恩人だから、あなたを困らせるようなことは絶対にしないわ」
私は彼女を安心させようとした。まあ、雪女が実在するなんていう突飛なことを話したって誰にも信じてもらえないだろうけど。
「それを聞いてほっとしたわ。私たち雪の眷属はひっそりと暮らしたいの」
氷室さんの瞳の中に再び光が戻った。
澁澤君も氷室さんの正体に気づいている。でも、彼は実際に白い女たちの不思議な行動を見ていないから、今のところ問題視はされないだろう。たとえ雪の眷属とやらに目を付けられたとしても彼には御仏の加護がある。
公園の内堀にかかる、赤い欄干が鮮やかな朝陽橋の所で私たちは別れた。私は本日ポイント五倍デーを開催しているフレッシュ市場に向かった。