スノーフレークス
前もって聞いていた番地にたどり着くと、家の前に氷室さんが立って私のことを待っていてくれた。私の予想を裏切って彼女の後ろにはモダンで真新しい家が建っている。
氷室さんは私を連れて家の中に入った。広い玄関には氷室さんが通学用に履くローファーと、お母さんの物と思われるゴージャスな婦人靴が数足並んでいる。マノロ・ブラニクにジミー・チュー、クリスチャン・ルブタンといったブランドは田舎のデパートでは買えない代物だ。お母さんは神戸の三宮にでも買い物に出掛けているのだろうか。側面にある背の高い靴箱の中にもきっとたくさんの高級靴が収納されているのだろう。
広い廊下を抜けて私はリビングに通された。私は天井の高いリビングの内装に目を見張った。大きな窓にかかる花柄のカーテンはソファと同じ生地で作られ、両脇にシルクのタッセルが巻いてある。天井からはクリスタルのシャンデリアが下がり、壁際にはアンティークの家具が置いてある。壁には印象派の絵画が掛けられ、ローテーブルの上には淡いピンクのオールドローズが生けられている。ちょっと少女趣味が入っているところがいかにも女所帯らしい。
「いらっしゃい」
氷室さんのお母さんがお菓子の載ったお盆を持って入ってきた。
「日向葵です。初めまして」
私は頭を下げる。彼女とは吹雪の晩に会っているのに「初めまして」などと言ってしまった。
「私は翠璃の母親で、晶子っていうの。よろしくね」
私の前のソファに座った晶子さんはあの時見たのと同じ人だった。彼女は娘と同じ白い肌と長い黒髪を持っていて、ぞっとするほど美しい。とても高校生の娘がいるような女の人には見えない。彼女は質の良さそうなカジュアルウェアの上にチェックのエプロンを着けている。
晶子さんはテーブルの上に北欧風の茶器と皿を並べた。皿の上にはパステルカラーのマカロンがいっぱい並べられ、ティーカップには舶来物の紅茶が注がれる。氷室さんには氷の入ったアイスティーが出される。見ているだけで寒気がしそうな飲み物だ。
「高校で初めてできたお友達がどんな子か興味があったのよ。九月の体育の時は翠璃を助けてくれてどうもありがとう」
晶子さんが優美に微笑む。
「いえ。私こそ、池で溺れかかった時は翠璃さんに助けてもらって感謝しています」
氷室さんは私を連れて家の中に入った。広い玄関には氷室さんが通学用に履くローファーと、お母さんの物と思われるゴージャスな婦人靴が数足並んでいる。マノロ・ブラニクにジミー・チュー、クリスチャン・ルブタンといったブランドは田舎のデパートでは買えない代物だ。お母さんは神戸の三宮にでも買い物に出掛けているのだろうか。側面にある背の高い靴箱の中にもきっとたくさんの高級靴が収納されているのだろう。
広い廊下を抜けて私はリビングに通された。私は天井の高いリビングの内装に目を見張った。大きな窓にかかる花柄のカーテンはソファと同じ生地で作られ、両脇にシルクのタッセルが巻いてある。天井からはクリスタルのシャンデリアが下がり、壁際にはアンティークの家具が置いてある。壁には印象派の絵画が掛けられ、ローテーブルの上には淡いピンクのオールドローズが生けられている。ちょっと少女趣味が入っているところがいかにも女所帯らしい。
「いらっしゃい」
氷室さんのお母さんがお菓子の載ったお盆を持って入ってきた。
「日向葵です。初めまして」
私は頭を下げる。彼女とは吹雪の晩に会っているのに「初めまして」などと言ってしまった。
「私は翠璃の母親で、晶子っていうの。よろしくね」
私の前のソファに座った晶子さんはあの時見たのと同じ人だった。彼女は娘と同じ白い肌と長い黒髪を持っていて、ぞっとするほど美しい。とても高校生の娘がいるような女の人には見えない。彼女は質の良さそうなカジュアルウェアの上にチェックのエプロンを着けている。
晶子さんはテーブルの上に北欧風の茶器と皿を並べた。皿の上にはパステルカラーのマカロンがいっぱい並べられ、ティーカップには舶来物の紅茶が注がれる。氷室さんには氷の入ったアイスティーが出される。見ているだけで寒気がしそうな飲み物だ。
「高校で初めてできたお友達がどんな子か興味があったのよ。九月の体育の時は翠璃を助けてくれてどうもありがとう」
晶子さんが優美に微笑む。
「いえ。私こそ、池で溺れかかった時は翠璃さんに助けてもらって感謝しています」