スノーフレークス
「ううん、大丈夫よ。ずいぶんと中途半端な時期に転校しちゃったけど、ちゃんとやっていけると思うわ。こういう良い学校の生徒は転校生をいじめたりはしないし」
「そうか」
父さんが南国人の典型で明るく社交的である一方、母さんは体が弱いせいか性格的にはおとなしくて控えめだ。私の性格は二人の中間にあるというか、二人の性格をミックスしたものだ。特別明るくもなければ暗くもなく、おしゃべりでもなければ寡黙でもない。いつも三、四人の友だちに囲まれているけど、一人でいても結構平気な方だ。人気者にはなれないにしても大きなミスなく学校生活を送れると思う。
視界の端を一人の女子生徒が歩み去っていった。長身で色白の女の子。白い日除け帽をかぶり、白い夏のセーラー服の上に薄手のカーディガンを羽織っていた。おまけに、まるで大人みたいにサングラスまでかけている。彼女は長い黒髪をなびかせながらあっという間に視界の外へ消えていった。
「どうした」
父さんが私にたずねる。
「うん、ちょっと。今、すれ違った女の子のかっこうが」
「誰かとすれ違ったっけ」
「うん。帽子とカーディガンを身につけた子が歩いていたわ。サングラスもかけていたわ。きっと教室に行くのよ」
「そうか。父さん、ぼんやりしていて気づかなかったみたいだ。県立高校といってもここは進学校だから教室に冷房がついているんだぞ。なんでも保護者が金を出し合って設置したらしい」
横浜のごく普通の公立高校ではそんな贅沢なものはついていなかった。七月と九月の前半は蒸し風呂のような教室の中でへたばっていたものだ。赤点なんか取って補習を受けることになろうものなら、八月の炎天下で教室に缶詰にされるだろう。
「冷房がついているならカーディガンだって羽織りたくもなるさ」
「そうね」
私は相槌を打つ。
放課後、私は四人の女子に囲まれて高岡駅のマクドナルドにいた。
同じ文系クラスの谷口さん、藤井さん、佐伯さん、それから高瀬さんと一緒に私はフライドポテトを食べていた。彼女たちは都会から来た転校生に興味津々で質問をぶつけてくる。転校生が最初に受ける洗礼である。さすがに名門校に通う良い子たちなので「カレシ」の有無といった低レベルの質問はしてこない。
「そうか」
父さんが南国人の典型で明るく社交的である一方、母さんは体が弱いせいか性格的にはおとなしくて控えめだ。私の性格は二人の中間にあるというか、二人の性格をミックスしたものだ。特別明るくもなければ暗くもなく、おしゃべりでもなければ寡黙でもない。いつも三、四人の友だちに囲まれているけど、一人でいても結構平気な方だ。人気者にはなれないにしても大きなミスなく学校生活を送れると思う。
視界の端を一人の女子生徒が歩み去っていった。長身で色白の女の子。白い日除け帽をかぶり、白い夏のセーラー服の上に薄手のカーディガンを羽織っていた。おまけに、まるで大人みたいにサングラスまでかけている。彼女は長い黒髪をなびかせながらあっという間に視界の外へ消えていった。
「どうした」
父さんが私にたずねる。
「うん、ちょっと。今、すれ違った女の子のかっこうが」
「誰かとすれ違ったっけ」
「うん。帽子とカーディガンを身につけた子が歩いていたわ。サングラスもかけていたわ。きっと教室に行くのよ」
「そうか。父さん、ぼんやりしていて気づかなかったみたいだ。県立高校といってもここは進学校だから教室に冷房がついているんだぞ。なんでも保護者が金を出し合って設置したらしい」
横浜のごく普通の公立高校ではそんな贅沢なものはついていなかった。七月と九月の前半は蒸し風呂のような教室の中でへたばっていたものだ。赤点なんか取って補習を受けることになろうものなら、八月の炎天下で教室に缶詰にされるだろう。
「冷房がついているならカーディガンだって羽織りたくもなるさ」
「そうね」
私は相槌を打つ。
放課後、私は四人の女子に囲まれて高岡駅のマクドナルドにいた。
同じ文系クラスの谷口さん、藤井さん、佐伯さん、それから高瀬さんと一緒に私はフライドポテトを食べていた。彼女たちは都会から来た転校生に興味津々で質問をぶつけてくる。転校生が最初に受ける洗礼である。さすがに名門校に通う良い子たちなので「カレシ」の有無といった低レベルの質問はしてこない。