スノーフレークス
「私にはなんだかよくわからない人種だわ」
私が哲学の本なんか開いたら一分で眠くなってしまうだろう。頭の良い人たちの考えることってよくわからない。
「そう、そのとおり。彼らはヘンな男の子たちなんだ。で、精神的なホモだから女の君が神聖なる象牙の塔に迷い込んできたのが気に食わないというわけさ。劣等人種の女が一丁前に地理の勉強なんかしているのを見るととっちめたくなる。だからああいう悪さをしちゃったんだと思うな。それでもって玲一郎はあのとおり男前だから、彼にはこころよくプリントを返してくれたのさ」
「なんか性格悪いお化けね」
そんなに根性が曲がったやつなら、あの時氷室さんにもっとやっつけてもらえば良かった。
「まあ、当時の学生の中にもいいやつはいっぱいいたと思うよ。池のやつはひねくれ者だから化けて出ちゃうんだよ」
「でしょうね」
戦後、学校制度の改革で古城高校には女子生徒がいっぱい入ってきたのに、私だけがお化けに狙われたのはやっぱり霊感があるからなのだろう。なんだか損な体質である。
「君と玲一郎にそういう接点があったなんてなんだか面白くないよ」
クリスがつぶやく。
「え?」
「しかも、あいつの方がポイントを稼いじゃったから僕もうかうかしてはいられないね」
「ポイントって……」
「さ、もう一滑りしてくるか!」
大きく伸びをしてクリスは席を立った。長身の彼が戸口に向かっていくのを私は見送った。
そのスッキリとした後ろ姿を見つめながら私はクリスの発した言葉の意味を考えていた。
その時頭の中にひらめいた考えを私はすぐに振り払った。そんなことがありえるなんて考えるだけでもうぬぼれている。
家に帰る頃には辺りはすっかり暗くなっていた。クリスのお父さんが大型の四駆に私たちを乗せて家まで送ってくれた。お父さんみたいな大きな体をした外国の人にはぴったりの車だ。昼間のスノーボードで疲れたクリスと手島君は車の中で眠っている。
田舎の夜道は辺りが真っ暗で街頭の灯りも乏しい。車窓に暗い世界が流れているのを私はただひたすら眺めている。一面に降り積もった雪は私から木々や田畑の姿を隠している。単調な景色の連続を見ていると私も眠気に誘われそうだ。
私が哲学の本なんか開いたら一分で眠くなってしまうだろう。頭の良い人たちの考えることってよくわからない。
「そう、そのとおり。彼らはヘンな男の子たちなんだ。で、精神的なホモだから女の君が神聖なる象牙の塔に迷い込んできたのが気に食わないというわけさ。劣等人種の女が一丁前に地理の勉強なんかしているのを見るととっちめたくなる。だからああいう悪さをしちゃったんだと思うな。それでもって玲一郎はあのとおり男前だから、彼にはこころよくプリントを返してくれたのさ」
「なんか性格悪いお化けね」
そんなに根性が曲がったやつなら、あの時氷室さんにもっとやっつけてもらえば良かった。
「まあ、当時の学生の中にもいいやつはいっぱいいたと思うよ。池のやつはひねくれ者だから化けて出ちゃうんだよ」
「でしょうね」
戦後、学校制度の改革で古城高校には女子生徒がいっぱい入ってきたのに、私だけがお化けに狙われたのはやっぱり霊感があるからなのだろう。なんだか損な体質である。
「君と玲一郎にそういう接点があったなんてなんだか面白くないよ」
クリスがつぶやく。
「え?」
「しかも、あいつの方がポイントを稼いじゃったから僕もうかうかしてはいられないね」
「ポイントって……」
「さ、もう一滑りしてくるか!」
大きく伸びをしてクリスは席を立った。長身の彼が戸口に向かっていくのを私は見送った。
そのスッキリとした後ろ姿を見つめながら私はクリスの発した言葉の意味を考えていた。
その時頭の中にひらめいた考えを私はすぐに振り払った。そんなことがありえるなんて考えるだけでもうぬぼれている。
家に帰る頃には辺りはすっかり暗くなっていた。クリスのお父さんが大型の四駆に私たちを乗せて家まで送ってくれた。お父さんみたいな大きな体をした外国の人にはぴったりの車だ。昼間のスノーボードで疲れたクリスと手島君は車の中で眠っている。
田舎の夜道は辺りが真っ暗で街頭の灯りも乏しい。車窓に暗い世界が流れているのを私はただひたすら眺めている。一面に降り積もった雪は私から木々や田畑の姿を隠している。単調な景色の連続を見ていると私も眠気に誘われそうだ。