スノーフレークス
「うわぁ、ありがとうございます!」
私はうれしさのあまりその場で飛び上がった。
「ただし、これからはお前も観音菩薩殿にお仕えするのだ。そのご厚意に感謝して祖母譲りの特別な力を迷える人々の救済のために使うのだ。わかったな」
「はい。お仕えするといっても私はどんなことをすればよろしいのでしょうか」
多少霊感があるといっても私には氷室さんや澁澤君が持っているようなすごい能力は無い。
「いつか観音菩薩殿から命を受けることがあるからそれまで待たれよ」
「わかりました。大恩ある観音様のご命令であれば何なりと引き受けます」
母さんの命を助けてもらうのだからそれくらいの気持ちでいよう。
「それからそこにいる雪の使いよ」
お地蔵様は氷室さんの方を向いた。
「お前は友の気持ちに折れて、この娘を本来は人間が立ち入ることのできない冥府の門まで連れてきてしまった。日頃のお前たちの働きには観音菩薩殿ともども私も感謝しておるが、務めをなす上で情に流されるのは好ましいことではない。罰としてお前のその見事な黒髪を取り上げることにする」
「はい、地蔵菩薩様のおっしゃることはごもっともです。この度は軽率なことをして申し訳ありませんでした」
氷室さんは地面に膝をついて謝った。
私はお地蔵様の言葉を聞いて慌てた。私のために彼女まで罰を受けてしまうなんて申し訳なさすぎる!
「ちょっと待ってください! 氷室さんは少しも悪くないです! ここに連れてきてもらったのは私が無理やりお願いしたことなんです! 罰するならどうかこの私を!」
私がお地蔵様に願い出ると氷室さんはまた片手で私の体を制した。
「あなたのご命令を聞き入れます。どうか私の髪をお取りくださいませ」
氷室さんの髪が奪われるなら私の髪を代わりに差し出したいものだけど、あいにく私の髪は短いくせ毛でとても仏様に献上できるような代物ではない。私はそれ以上言葉を継ぐことができなかった。
空間の継ぎ目から現世へ帰る道すがら、雪舟の上で氷室さんは不機嫌だった。彼女は「余計なことは言わないでって言ったのに」とつぶやいた。そんな彼女の様子を見て私はただ謝るばかりだった。
その日の未明に母さんの意識は戻った。
私はうれしさのあまりその場で飛び上がった。
「ただし、これからはお前も観音菩薩殿にお仕えするのだ。そのご厚意に感謝して祖母譲りの特別な力を迷える人々の救済のために使うのだ。わかったな」
「はい。お仕えするといっても私はどんなことをすればよろしいのでしょうか」
多少霊感があるといっても私には氷室さんや澁澤君が持っているようなすごい能力は無い。
「いつか観音菩薩殿から命を受けることがあるからそれまで待たれよ」
「わかりました。大恩ある観音様のご命令であれば何なりと引き受けます」
母さんの命を助けてもらうのだからそれくらいの気持ちでいよう。
「それからそこにいる雪の使いよ」
お地蔵様は氷室さんの方を向いた。
「お前は友の気持ちに折れて、この娘を本来は人間が立ち入ることのできない冥府の門まで連れてきてしまった。日頃のお前たちの働きには観音菩薩殿ともども私も感謝しておるが、務めをなす上で情に流されるのは好ましいことではない。罰としてお前のその見事な黒髪を取り上げることにする」
「はい、地蔵菩薩様のおっしゃることはごもっともです。この度は軽率なことをして申し訳ありませんでした」
氷室さんは地面に膝をついて謝った。
私はお地蔵様の言葉を聞いて慌てた。私のために彼女まで罰を受けてしまうなんて申し訳なさすぎる!
「ちょっと待ってください! 氷室さんは少しも悪くないです! ここに連れてきてもらったのは私が無理やりお願いしたことなんです! 罰するならどうかこの私を!」
私がお地蔵様に願い出ると氷室さんはまた片手で私の体を制した。
「あなたのご命令を聞き入れます。どうか私の髪をお取りくださいませ」
氷室さんの髪が奪われるなら私の髪を代わりに差し出したいものだけど、あいにく私の髪は短いくせ毛でとても仏様に献上できるような代物ではない。私はそれ以上言葉を継ぐことができなかった。
空間の継ぎ目から現世へ帰る道すがら、雪舟の上で氷室さんは不機嫌だった。彼女は「余計なことは言わないでって言ったのに」とつぶやいた。そんな彼女の様子を見て私はただ謝るばかりだった。
その日の未明に母さんの意識は戻った。