フレーム






小さな声で言ったため、

隼人に聞こえたか聞こえなかったかも分からないまま、

私が、家の敷地に入ろうとすると、




「何で?」




そう微笑む隼人に腕を掴まれる。

特に、怪しい笑顔ではない。


太一君は好きな人がいるのに、

私なんかが一緒にいたら…


そう言いかけて、口をつぐんだ。

時々、隼人には、
全部正直に言いたくなってしまう。

絶対にダメなのに。


なんとか代わりのこたえを探して

隼人の方に向き直すと、




「…私、覚え悪いから絶対迷惑かけるもん。」




そう言って笑う。

あぁ、きっと今の私、

全然上手く笑えてない。




「1年以上前にやった生物のことは覚えてるのに?」


「……自分で、頑張ってみます」


「夏休み、かかってるよ?
バレー部の人に迷惑かけるかもよ?」


「じゃあ!隼人、教え「教えない」」




そう私の言葉を遮った隼人は、

いつになく真剣な顔をしていた。

そして

はぁ、と軽く息を吐くと、




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