フレーム
勇気が出なくて、
ほんの軽く、太一君のTシャツを掴む。
すると、
ぎゅっと太一君が私を抱きしめた。
「太一君?」
太一「いいよ、3分間、こうしててあげる」
……ん?
いやいやいや、私は、
ただ、近くにいて欲しくて、
それだけなのに!!
そう訴えようと太一君の顔を見ようとすると、
上目遣いになってしまい、
なんだかこっちが恥ずかしい。
って、えぇ?
ニヤニヤ、してる?
「ち、近すぎっ!」
「え?何て?聞こえなかった」
「絶対嘘だ…えぇっ!?」
この状況を楽しんでいるであろう太一君は、
顔を近づけてまたフッと笑う。
何?何々!?
「あいつらのこと、ちょっとでも忘れられたならそれで良いよ。流石にもう戻ろう」
「うっ…うん。」
ニヤッとではなく
優しく微笑みながらそう言う太一君に、
何も言い返す事も出来ず、
ただ、高鳴ってしまっている自分の胸を押さえつける。
あんなことされたら、
忘れるに決まってるよ…。