フレーム





「あれから環奈が学校に来なくなって、心配し始めた俺は、美月と話して、やっと、環奈が桃華に嫉妬してることに気付いた。

素直にそれが嬉しくて、環奈が学校に来たら絶対に話に行こうって決めてた。

でも、ある日から俺と桃華がキスした、っていう噂が流れ出した。桃華が流した噂だった。本当はそんなことしてない、環奈と以外出来るわけ無かったし。

だから、環奈を裏切ったとかは無いってことを知って欲しかった。

傷つけて悪い。本当にごめん。」




そう言い終わると、裕也君は頭を下げた。


そう、だったんだ。

桃華先輩が流した噂、か。

私が、裕也君の話をちゃんと聞いていれば…

裕也君は何も、

何も悪くなかったのだ。

真実を知った私には目の前の裕也君が

頭を下げていることに違和感を感じてしまう。




「…裕也君は、悪く、ない。

全部、私の…私が頑固で裕也君の話を聞かなかったから」




そう裕也君を覗き込むと、目が合う。




「傷つけたのは俺だ…だから、

いや、お互い、様か?」




その一言で、

自然と笑みがこぼれる。




「わ、私!さっきの、凄く嬉しかった!
あの、2人の大人に言ってくれたこと。

裕也君が私をちゃんと見ていてくれたんだって分かったから…本当にありがとう。

あの言葉だけで、一生頑張れる。」




裕也君が正直に伝えてくれたのに、

私だけ伝えないのは違うなと思い、

精一杯、言葉を探して繋げる。



誰かに認められている。



この事実ほど嬉しいことは無かった。




「大袈裟だな…っておい!泣くなよ?」




大好きだった彼は幻では無かったのだ。




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