フレーム
始まった練習試合。
昨日が調子が悪かったのか、
それとも今日の調子が良いからか、
いや、きっと両方だ。
百合ヶ丘は昨日とは比べ物にならないくらい手強かった。
特に、一ノ瀬と東の2年コンビが生き生きとしている。
桜田「こっちも本気出すしかねーな」
白井「こわわわわ」
そんなふざけ合っている先輩の会話中の目、
笑っていないのだ。
一ノ瀬は俺より弱いと思っていたが、
同じかそれ以上の実力だった。
七瀬「安心しろよ、本気になった瀬戸のが強いからな」
暁「今は微妙だけどな」
「どういう意味ですか!?」
笑いながら返答するが、
落ち着けない自分がいる。
情けない、本当に。
スパイクをうつ瞬間の手の感触。
全然ダメだった。
俺っていつもどうやってたんだろう?
そう考えながらタイムアウトが終わるのを待っていると、
「だ、大丈夫?太一君。」
「環奈…」
そう俺のTシャツを掴む環奈を見て、
苦笑しそうになる。
話しかけられただけなのに、
なぜか気持ちが軽くなるんだから。
こいつを今すぐにでも
俺の彼女にしたい。
今までは環奈の過去のことにとらわれて、
そんなことは思えなかったが、
もう関係ない。
「合宿終わったら話したいことがある。
時間、つくってくれない?俺のために」
俺のために
なんて余計なことを。
少し後悔するが、
驚いて目を見開く環奈は
何も気にならなかったのだろう。
どうか伝わって欲しい。
俺の真剣さが。
太一side.end