最期の贈り物 ‐君への愛‐
帰る家はあるけれど、帰りたくない私。
でも、野宿をするという気は全くない私。
……お世話に、なろうかな。
「あの……、よろしくお願いします」
「ん。そんなかしこまらなくてもいいし。ちょっと歩くけど、構わねぇよな?」
歩く距離なんて、別に気にならないよ。
スタスタと歩き出した彼の二、三歩後ろを、懸命に歩く私。
さっきまで暗くてよく見えなかったけれど、彼の髪の毛は銀色と……、ほんの少し茶色がまじっているようだ。
歩く度に、はねた髪の毛がゆらゆらと揺れている。
身長も、百八十近くありそう。
絶対、モテるだろうな。
「な、名前、名前、なんていうんですか?」
意を決して、彼に声をかけた。
“彼”と呼ぶのは、大変呼びづらいし、何よりもこれから一緒に過ごすかもという相手の名前を知らないというのは、なんとも失礼な事だと思ったのだ。
私から、聞かないと失礼な気がした。
彼の、大事な、名前。
知りたくて。
「あぁ、名乗ってなかったな。俺は、篠木 燐(シノキ リン)だよ」
篠木……燐……。
しのき、りんくん。
カッコイイと思ったと同時に、似合ってるなと思った。
「篠木さん、ですね」