最期の贈り物 ‐君への愛‐
そう言うと、篠木さんは急に止まって腰を曲げた。
どうしたのかと駆け寄ると、笑っているようだった。
クククッ……と、声を押し殺しているのが聞こえてきた。
「し、篠木さんって……、篠木さんってなんだよ。笑かすなよ」
相当面白かったようで、目尻に涙をためて笑っている。
篠木さんって、そんなに面白かったのかな……。
別に、普通だと思うんだけど。
でも、怖い顔していた彼が笑ってくれるのは、ちょっぴり嬉しかった。
「燐でいいよ、燐で」
何年も上の彼を、燐って呼び捨てで呼んでいいものか……と自分の中で葛藤した上、彼の言う通りにすることにした。
燐、と彼を呼ぶと、ん?と金色の瞳が私に向いた。
「あっ……、呼んでみただけです」
「そ?……俺は、なんて呼んだらいいわけ」
「さ、冴中 優恵(サエナカ ヤエ)っていいます。優恵って呼んでくれたら……」
「優恵、ね。優恵、タメでいいよ。敬語は受け付けてねぇから」
えぇっ……。
上の人には敬語、という大事なルールを真面目に守ってきている私は、その言葉に困惑した。
私は中学二年生の、ガキンチョだ。
きっと彼は、高校生……か、それより上。
そんな人相手に、呼び捨て、敬語なんて無理の他ないよ。