最期の贈り物 ‐君への愛‐
「そんなかしこまらなくてもいいよ」
そう言って、椎菜ちゃんは口元に手を添えて笑い始めた。
上品な笑い方で、同い年のはずなのに、随分と年上の人のように感じた。
……なんか、燐とはまた違った感じがする。
でも、鼻と口の形はそっくりで、美形。
きっと、お母さんやお父さんが美形だったんだろうなぁ。
「優恵ちゃんって呼ぶね。 私のことは、椎菜でいいよ」
「椎菜ちゃん、ですね」
なんだかこっちはちゃん付けで呼ばれているのに、私だけが呼び捨てにするのは難しい。
案の定、椎菜でいいのにと言われたが、思い切り首をぶん回すと、仕方ないかと諦めてくれた。
「さ、こんなとこで話しててもあれだし、あがって。 上に空いてる部屋、一つあったよね?」
「ある」
ずっと立っていて疲れたのか、それともいつもこの調子なのか、燐から帰ってきた言葉はたったの二文字だけだった。
椎菜ちゃんは返事の仕方にはさほど興味がなかったらしく、自分の頭でなにか考えているようだ。
「優恵ちゃん、お風呂はもう入った?」
玄関に自分の靴を周りの靴と同じように並べながら、私は答えた。
「いえ、まだです」
「じゃあ、部屋の方は私たちがやっておくから、お風呂入っておいで」
さも当たり前かのように言うもんだから、私は一瞬フリーズした。
そして、やっと頭が回って全力で拒否した。
「時間遅いし、早く入らないと」
「部屋の片付け、私もやります……!」