【短編】とある悪い日の話
何にも知らない七咲は、いつもの王子様スマイルで私の地雷を踏み潰していく。
「奇遇ですね。じゃあ、俺もひとりなので」
「え、ちょ、はぁ?」
「すいませーん!注文いいですか?」
そのまま私の隣に腰掛けた七咲は、店員を呼びつけて。
「とりあえず生一つ。あと枝豆と、どて煮と、お刺身盛り合わせと…あ、篠田さん何にします?」
「いや待ちなさいよ。誰が相席するって言ったのよ!?」
「いいじゃないですかたまには。ほら、店員さん待たせるのもあれなんで」
メニューを広げて次々と注文していく七咲は、こういう時ですら気が回る。
「……生一つと、焼き鳥盛り合わせで」
「お、いいですねぇ。じゃあ、とりあえず以上で」
相変わらずヘラヘラと笑顔を振りまきながらメニューを戻した七咲は、私をじっと見つめて。
「なんか今日元気ないですね」
そう、言い当ててみせる。
「だったら何よ」
「あ、否定しないんですね。ビンゴ」
「っ、あんたね!」
「…で、どうしたんですか?」