【短編】とある悪い日の話
完全に誘導尋問。
まんまとハマってしまった自分が恥ずかしくて声を荒らげた私を見ても、七咲は相変わらず優しく微笑んで頬杖をつきながら私をまっすぐ見据える。
「…仮に凹んでたとして、何であんたに教えないといけないの」
「なんでって、心配で、気になってるから。それ以外に理由なんていりますか?」
私は、こいつが苦手だ。
こうして簡単に勘違いさせるようなセリフを吐いて、何人もの女の子を手玉に取る。
そういうことを言われ慣れていない私は、どうかわせばいいのか分からないから。
「うーん、篠田さんが落ち込むなんてレアだからなぁ。」
ビールが運ばれてくると、七咲が勝手にカンパーイ、とジョッキ同士をぶつけてきてそれにまた更にイラッとする。
「なんだろ。仕事…は違いますよね。朝怒られてましたけどノーダメージっぽかったし」
「いや、探らなくていいから」
ていうか、怒られてるとこ見てたのか。
「そうなるとプライベートですよね?俺、篠田さんのプライベート全然知らないもんなぁ」
「いや、だから」
うんうんとジョッキ片手に考え込まれるのが鬱陶しくて再び突っ込もうとしていたのに。
「ありがちだけど彼氏に振られた、とか?」
意図も簡単に当てられて、咄嗟に返す言葉が見つからず。