【短編】とある悪い日の話
「篠田さんすみません!私の確認不足で」
やっと部長のお説教から解放され自分のデスクへたどり着くと、隣の席の後輩が眉を下げながら顔の前で手を合わせた。
「いいよ。まさか私もそんな初歩的なミスされると思ってなくて確認しなかったし気にしないで」
「すみません……」
相川百合(あいかわ ゆり)
今年の春入った新人。
栗色のロングヘアを毎日かかさず巻いて出社し、キーボードを打つ指先にはいつもゴテゴテのジェルネイル。
今日も今日とてこのオフィスの中で缶詰だというのにマツエクだなんだって美容やオシャレに余念が無い彼女は、イマドキ女子って感じなのはいいのだけど。
……若い子って、やっぱりイマイチ苦手。
仕事への責任感が足りてないというか、まあ入社して数ヶ月だししょうがないのかもしれないけど。
こうして少しきつく言うだけで俯いて目に涙を浮かべて。
いやいや、今日に限っては泣きたいのはこっちなんですけど、とはさすがに言えずパソコンの電源を入れる。
若い子は、苦手だ。
打たれ弱いし、すぐ仲間内で愚痴を共有するし、キャピキャピしていて見ていて疲れる。